請求書の書き方:個人事業主向けの記入例とインボイス制度の基本
個人事業主が請求書に書く項目、インボイス(適格請求書)の記載事項と登録番号、源泉徴収がある場合の計算、免税事業者の場合の注意点を、記入例つきでまとめました。
結論から言うと、請求書には「誰が・誰に・いつ・何を・いくらで・いつまでに・どこへ振り込むか」を書きます。インボイス発行事業者として登録している個人事業主は、さらに登録番号と、税率ごとに分けた合計額・消費税額を記載します。取引先が法人で、原稿料などの源泉徴収の対象になる報酬なら、差引後の振込額も書いておくと行き違いがありません。
フリーランスや個人事業主になって最初に戸惑うのが請求書です。決まった様式はありませんが、書いておくべき項目と、インボイス制度で求められる記載事項があります。この記事では、記入例を使って順番に整理します。
請求書に書く項目
| 項目 | 記入例 | ポイント |
|---|---|---|
| 書類名 | 請求書 | 一番上に大きく |
| 請求書番号 | 2026-1025 | 自分で連番を振ると管理しやすい |
| 発行日 | 2026年10月25日 | 締め日に合わせることも多い |
| 宛先 | 株式会社〇〇 御中 | 正式名称で。担当者宛なら「様」 |
| 発行者 | 氏名または屋号、住所、連絡先 | 登録していれば登録番号も |
| 件名・取引内容 | 10月分 記事執筆 10本 | 何に対する請求か分かるように |
| 取引年月日 | 2026年10月1日〜31日 | 月まとめなら期間で |
| 明細 | 品目、数量、単価、金額 | 見積書・発注書と対応させる |
| 税率ごとの合計と消費税額 | 10%対象 300,000円、消費税 30,000円 | インボイスでは必須 |
| 源泉徴収税額 | −30,630円 | 対象の報酬で、相手が源泉徴収する場合 |
| 請求金額(振込額) | 299,370円 | 一番大事な数字は目立つ位置に |
| 支払期日 | 2026年11月30日 | 「月末締め翌月末払い」など取引条件どおりに |
| 振込先 | 銀行名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義 | 名義はカナで正確に |
インボイス(適格請求書)の記載事項
インボイス発行事業者として登録している場合、請求書をインボイスとして発行するには、国税庁が示す次の事項を記載します。
- インボイス発行事業者の氏名または名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目がある場合はその旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額と、適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 交付を受ける事業者(取引先)の氏名または名称
登録番号は「T」と数字 13 桁です。法人は T と法人番号、個人事業者は T と国税庁が割り振る 13 桁で、マイナンバーは使われません。取引先の番号が正しいかは、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で検索して確認できます。
消費税の税率は、標準税率 10%、軽減税率 8%(飲食料品など)です。なお、令和 9 年 4 月 1 日から令和 11 年 3 月 31 日までの 2 年間、飲食料品の譲渡について税率を引き下げる法案が国会に提出されており、国税庁は法案が成立した場合の内容を案内しています。飲食料品を扱う場合は、国税庁の最新の案内を確認してください。
記入例:ライターが法人に原稿料を請求する場合
インボイス発行事業者として登録している個人のライターが、株式会社〇〇に 10 月分の記事 10 本を請求する例です。
| 品目 | 数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 記事執筆(10月分) | 10本 | 30,000円 | 300,000円 |
| 10%対象 合計(税抜) | 300,000円 | ||
| 消費税(10%) | 30,000円 | ||
| 合計(税込) | 330,000円 | ||
| 源泉徴収税額(300,000円 × 10.21%) | −30,630円 | ||
| ご請求金額(お振込額) | 299,370円 |
原稿料は源泉徴収の対象となる報酬です。国税庁のタックスアンサーによると、支払金額が 100 万円以下なら支払金額 × 10.21%、100 万円を超える部分は 20.42% です。請求書で報酬と消費税額が明確に区分されていれば、税抜の金額を基準に計算できます。この例では 300,000 円 × 10.21% = 30,630 円です。
源泉徴収をするのは支払う側です。取引先が源泉徴収をしない個人の場合などは差し引かずに請求します。差し引くかどうか迷ったら、先に取引先に確認しましょう。なお国税庁のタックスアンサーには、令和 9 年分以後は所得税・復興特別所得税に防衛特別所得税が加わると書かれているので、その時期の請求では最新の計算方法を確認してください。
免税事業者の場合
インボイス発行事業者として登録していない免税事業者も、請求書は発行できます。ただし登録番号は書けず、その請求書はインボイスになりません。
取引先は、インボイスがないと原則として仕入税額控除ができませんが、経過措置があります。国税庁の案内では、免税事業者等からの課税仕入れについて控除できる割合は、令和 8 年 10 月 1 日から 80% から 70% になり、令和 10 年 10 月 1 日から 50%、令和 12 年 10 月 1 日から 30% と段階的に下がります。登録するかどうかは、取引先との関係や自分の売上で判断することになるため、迷ったら税務署や税理士に相談してください。
請求書を書く手順
- 見積書・発注書を確認する:品目、単価、数量、支払条件をそろえます。
- 明細と合計を書く:税率ごとに合計し、消費税額を出します。
- 源泉徴収の有無を確認する:対象の報酬で、相手が源泉徴収する場合は差引後の振込額も書きます。
- 支払期日と振込先を書く:取引条件どおりの日付と、正確な口座名義を。
- PDF で送り、控えを残す:送った日と入金予定を帳簿に記録し、入金されたら消し込みます。
よくあるミス
- 宛名が正式名称でない:「(株)」の省略や旧社名は、差し戻しの原因になります。
- 税率ごとの合計がない:登録しているのに税率ごとの区分がないと、インボイスの要件を満たしません。
- 支払期日がない:期日がないと、入金の遅れに気づきにくくなります。
請求書づくりを楽にするには
無料の見積書・請求書作成ツールで「請求書」を選ぶと、小計と消費税が自動で計算され、そのまま PDF で保存できます。見積書から作る場合は〈見積書の書き方〉、工事の見積なら〈工事の見積書テンプレート〉も参考にしてください。
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よくある質問
請求書に決まった書式はありますか?
法令で決まった書式はありません。ただし、インボイスとして発行する場合は、登録番号や税率ごとの消費税額など、国税庁が示す記載事項を満たす必要があります。
請求書に押印は必要ですか?
インボイスの記載事項に押印は含まれていません。取引先の社内ルールで求められることはあるので、必要かどうかは取引先に確認しましょう。
登録番号はどこで確認できますか?
自分の番号は登録時に税務署から通知されます。取引先の番号は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で検索できます。
源泉徴収される報酬はどれですか?
原稿料や講演料などが代表的です。対象となる報酬は国税庁のタックスアンサーにまとめられているので、自分の報酬が当てはまるか確認してください。
免税事業者でも請求書を出していいですか?
はい。登録番号は書けず、インボイスにはなりませんが、請求書自体は発行できます。取引先の仕入税額控除は経過措置の割合(令和 8 年 10 月 1 日からは 70%)になります。
参考
- 国税庁:インボイス制度について(適格請求書の記載事項)
- 国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト:登録番号の構成
- 国税庁:No.6303 消費税および地方消費税の税率
- 国税庁:No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき
- 国税庁:インボイス制度に関するお知らせ(令和8年度税制改正特集)
本記事は一般的な情報をまとめたもので、税務・法律上の助言ではありません。制度は変わることがあるため、上記の公式情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。
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